​わたしクレヨン

​　一人暮らしを始めて、もう3年になった。最初は手探りだったこの生活にも、もうずいぶん溶け込めていると思う。

　いまだに実家が恋しくなったり、土地勘がなかったり、都心のビルの大きさに驚いたりと、変わらないこともある。それでも、地元とは違う景色を楽しんでゆったりと暮らしている。

　私が今暮らしている寮の部屋からは、とても良い景色を眺められる。実家は階が低い部屋だったため、引っ越したての時は上層階のこの景色が新鮮でたまらなかった。
天気がいい時は、遠くに富士山が見える時もある。富士山が見れる部屋というだけで、自室が高級ホテルのような気がしてくる。実際、好きな時に寝て、好きなものを食べるこの生活はまるでリゾートのようだ。

​　私が特に好きなのは、夕焼けで空が鮮やかになるあの時間だ。
橙、桃、紫で彩られた空が、ベランダから一望できる。雲も自由に形を変えて、見ていると心が安らぐ。
　冷える風に寂しい気持ちを呼び起こされる時もあるが、それも自分には必要な気持ちだと思っている。

　紅茶を飲みながら、のんびりベランダの景色を見る、自分だけの空間。

　ひとりいろは、一人の寂しさと一人の時間を味わう、そんないろだ。